辰濃和男『文章の書き方』

文章の書き方 (岩波新書)

文章の書き方 (岩波新書)

「文は心である」
まえがきに書いてあるこの言葉がこの本の全てだろう。
著者は朝日新聞の顔とも言える「天声人語」を担当した元新聞記者である。
3章から成る本書は、1章は文章の題材を探す時の心構え、2章は文章を書く時に気をつけること、3章は文章の表現で気をつけることを書いている。
2章までは、ほぼ技術的な話は出てこない。
しかしこの本を通して読むと、いかに文章が人間を表しているかよくわかると思った。


著者が福沢諭吉を尊敬していることもあって、現代の文章からの引用が少なくぱっと見た感じ少ない。
でもその引用が一つ一つ読みやすくて意味が伝わりやすい。
本全体の文の雰囲気が読んでいて気持ち良いので、こういう内容だけれど嫌味がない点が印象が良いなぁ。


そしてこの本で書いてあることは、何も文章に関わる人間向けの内容ではない。
例えば、現場で物を見ること、先入観を排すこと、バランス感覚をもつこと、自分を客観視すること・・・。
それはビジネスでも、コミュニケーションでも、勉強でも、スポーツでも、恋愛でも同じことなのじゃないかな。
ある意味でこの本はHOW TO本ではない。
自己啓発本だと思う。


そんな人間性を表してしまう文章って深い。
そして、ちょっと怖い。